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豊後豊岡・中山香
 別府から中津に戻る。ただし、豊後国から豊前国の境を越えて走る普通列車は少なく、一時間半ほど待たなくてはならない。その時間を利用して温泉にでもと思うが、過去に別府の共同浴場にはいくつか入っているので、未訪の地を選択した。
 ホームは帰宅の高校生で賑わっている。電車の中で飲みますと宣言した地酒はしまったままだ。やってきた亀川行きに乗り込んだ。
 亀川は二つめの駅で、海沿いにある駅だが、真新しい橋上駅舎に改築されており旅情に乏しい。しかし、構内通路に展示された往時の亀川の写真を見ると、ここは古くから温泉地であったことがわかる。海岸沿いの温泉とは旅情を感じ始めたが、目的地があるので今回は諦めた。
 次にやってきた電車は日出行きだ。私は手前の豊後豊岡駅で降りた。別府に向かう途中、駅舎を目にして降りてみたくなったのだ。古い木造駅舎である。
 一応、駅の裏は海岸なようだが、そこに出る道が大回りなので途中で引き返す。亀川は別府の郊外の町という感じだったが、この辺りまで来ると農村の風情が漂ってくる。降りた高校生も少ない。
 駅に戻った私は駅舎を眺めたあと、ホームのベンチで地酒を取り出した。夕方の潮風が心地いい。誰もいないホームで酒を飲んだ。やがて次の電車がやってくる頃、一人女子高生がやってきて私の傍で電車を待つ。地酒をしまい、中山香行きの電車に乗り込んだ。
 中山香は低い山間に小さく開けた集落だった。人の名前みたいな駅名は、山香(やまが)という町の中ほどにあるので、そういう駅名が付いたようだ。その中山香で高校生たちを降ろし、僅かな乗客を乗せ、電車は別府大分方面に折り返していく。
 駅前に小さな駅前通りが横切っている。随分と古めかしい商店が並んでいるが、多くは廃墟だった。駅前旅館の跡まである。そんな昭和の残像みたいな道を高校生たちが歩いていく。
 所在なげに散歩していたおじさんに声を掛けられ、少しばかり中山香の話を聞いた。昔、火事があって町が焼けたことなどを教えてくれた。
 駅に戻ると、黒と白の猫が佇んでいた。猫はこちらの存在を認識すると近づいてきて戯れ始めた。日はだいぶ傾き始めた。中山香は県境のような静かな空気を漂わせながら、低い山並みに太陽を隠していく。
 名残りを惜しみながら猫と別れ、待合室で地酒の残りを飲みながら電車を待つ。ここから中津に向かう人は少ないのだろう。物音のしない駅で酒を空けた。
 やってきた中津行きは想像とは違い混んでいた。別府から長い距離をかけて帰路に就く高校生や大学生を乗せて、電車は日の沈んだ農村を快走した。
(FUJIFILM X100)
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2019.07.24 Wed l 神奈川県以外 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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