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岩手
 タクシーで晴山駅に戻ってきた。農村の中に溶け込むように、ひっそりと佇む小さな駅。やってきた釜石線のディーゼルカーは遠野方面からの高校生で席は塞がっていた。
 東北新架線との乗り換え駅である新花巻は一番線しかないホームに、20人くらいの乗り換え客が列車を待っていた。少しずつ日は暮れ、花巻に到着する。
 18時41分の台温泉行きの終バスまで一時間近くある。今夜の宿は台温泉で、素泊まりで予約したので花巻駅で夕食にする。駅そば屋と待合室が一緒になった空間は高校生でいっぱいだ。私達は「賢治そば」という山菜そばを頼み、それを夕食とした。
 駅構内にあるコンビニで地酒とワインと岩手の会社が作っている銀河高原ビールとおつまみを買い、バス停に向かった。もう外は夜である。
 バスは花巻駅東口を出発したあと、駅の西側に出て、しばらく市内を走ったあと、町の郊外に出た。夜の車窓でも、山の方に向かっているのがわかる。
 やがて花巻温泉に着いた。ここは観光客向けの綺麗なホテルが数軒ある。居酒屋も一軒確認できた。ここに泊まるか、ここで夕食ということも当初考えていたが、これから泊まる台温泉の湯治場的雰囲気に惹かれたのだ。
 道路は峠に上がり、その中腹にある終点に着いた。駅からは20分ほどの距離、周囲は暗い。バス停から細い道が二つに分かれており、その道沿いに小さな温泉街が形成されているという訳だ。予約した旅館はバス停のすぐ先であった。木造の古い旅館で、湯治場の雰囲気を残す宿だ。
 源泉かけ流しだという温泉を堪能したあと、廊下にある冷蔵庫で冷やしておいたビールを開けて部屋で乾杯する。網戸の窓から入ってくる風は、もう秋の涼しさを帯びていた。
 ビールに続いて日本酒のカップを飲む。遠野の酒で、これもまた美味しい。木造旅館の部屋で風に涼みながらくつろぐ。観光的な贅沢感はないが、とても楽しい。私達は下駄を借りて夜の温泉街の散歩に出かけた。時計はまだ夜9時を過ぎたところである。
 台温泉は小さな温泉街で、宿も古びた旅館ばかりなので、夜ともなると風情のある道となる。小川のせせらぎが聞こえてくる。すぐに温泉街は尽き、引き返した。
 バス停の所まで来てみたが、道路を照らす街灯だけで、歩いているような人は居ない。我々は仕方なく旅行者用の駐車場に腰を下ろし、ワインを開け、旅館から借りてきたコップに注いで乾杯した。ふと、空を見上げると無数の星。まるでプラネタリウムである。星を肴に飲む岩手のワインはとても美味しかった。
 翌日、7時台のバスに乗って花巻駅に向かう。このバスが一番早い便なのだ。出発前に朝風呂にも入った。湯治場的な宿なので浴室は小さいが、だからこそ趣きがあり、何より湯が良かった。さすが源泉だ。
 昨夜も寄った花巻駅のコンビニでパンを買い、ホームで食べているうちに盛岡行きが来た。初日以来、東北本線の電車は701系という通勤型である。車内で駅弁を開けるような内装ではないのが残念だ。
 盛岡からは第三セクター鉄道の「IGRいわて銀河鉄道」に乗り換えとなる。元の東北本線で、新幹線が出来た時に第三セクター化された。青森県内に入ると「青い森鉄道」と名前が変わる。停車していた八戸行き電車は、その青い森鉄道の電車で、側面にキャラクターがラッピングされていた。この電車も元JR701系なのである。
 電車は思いのほか混んでいて席が塞がっていたが、大学があるらしく、郊外に出ると降車客が増えてやがて空いた。少しずつ県境に近づき、山深い風景となっていく。この風景の中を何万人という兵士が歩いたのだなと思いながら、それを眺める。これから行くところは戦国時代の史跡である。二戸駅に降りる青空が広がっていた。
(RICOH GR)
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2018.10.07 Sun l 神奈川県以外 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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