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丹内山神社
 東北本線花巻駅に着いた。ここで釜石線に乗り換える。釜石線は遠野を経由して三陸の釜石に至るローカル線で、前身となった軽便鉄道は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の銀河鉄道のモデルになったと言われる。
 列車は夕陽を受けて東へ走る。田圃の中に突然巨大な高架が現れるが、これは新幹線の新花巻駅だ。ここから遠野や釜石に向かう人達が乗り込んできた。遠野は柳田国男の「遠野物語」で、釜石は新日鉄の工場とラグビーで知られる町である。
 16時18分。私達は遠野の少し手前にある晴山で降りた。片面一線のホームしかない無人駅で、待合室こそホーム上にあるが駅舎はない。ホームの前は田園地帯。駅を出ると僅かながらの住宅地。花巻駅から15.9kmに立つのどかな駅である。
 駅前広場などというものはなく、それを見越していた私は、予め調べておいたタクシー会社に電話を掛けてタクシーを呼んだ。一駅手前の土沢にある会社で、土沢は東和町の中心だ。平成の大合併で東和町は花巻市に編入されている。
 東和という名前は後から付けたような造語地名っぽさがあるけれど、どうやらそうではなく古代から存在する地名だそうで、「東に作られた和の国」という意味を持つ可能性があるという。此処は、かつて大和朝廷に仕え金属関連の製造管理を行なっていた物部(もののべ)氏が、大和を追われて辿り着いた地と言われる。
 タクシーは10分としないうちにやってきた。「丹内山神社に行きたい」という私の要望にすぐ頷いたものの、「二の鳥居の前で降りたい」という言葉に首を捻った。周辺にある建物などは、出発前に眺めていた地図で記憶していたので、それを説明すると大体わかったようで、軽快に走り始めた。
 道は丘陵を越え、丘と丘の間の平地へ移っていく。晴山駅から10分としないうちに、目的地の二の鳥居に着いた。1800円。帰りは17時25分にこの場所でと、予約を入れて車を降りた。
 二の鳥居は道路に面して立っており、横に宮沢賢治の歌碑がある。「祭日(一)」というその詩は、丹内権現(丹内山神社)のお祭りを詠んだものだそうだ。鳥居の先に延びる参道は緩やかな上りとなっていた。
 参道はやがて林の中に入っていく。道の脇に水が流れている。砂利道と交差し、そこに赤い鳥居が立っていた。これが三の鳥居である。この砂利道に小さな駐車スペースがある。
 石段を上がっていくと、様々な社があり、随所に丹内山神社の七不思議についての案内板が設置されていた。さらに石段を上がり、社殿に向かう。ここで手を合わせて、我々は社殿の背後の斜面を登った。そこには、巨大な石が置かれてある。石、というより、岩と言った方が伝わる大きさだ。
 胎内石と言われるこの巨石は、アラハバキ大神の石なのである。アラハバキとは古代から東北で信仰されてきた巨石信仰であり、石の神様である。物部氏が金属の専門家である家系ゆえ、そこから広まっていたのかもしれない。
 胎内石は向かって左下に小さな穴が開いている。ここを壁面に触れないようにくぐり抜けると願いごとが成就するという。Tさんは小柄なので挑戦してみようかということになった。丹内山神社は受験にご利益があるという。Tさんは間もなく自動車の合宿免許に行くそうなので、無事合格を祈願しようという訳だ。ところが、虫に弱いTさんは腰が引け断念した。それもまたよし。アラハバキの神様に頭を下げ、胎内石をあとにした。
 帰りの参道からは、夕陽が木々の隙間から射してくる景色を味わうことが出来た。とても静かで、いわゆる俗的な観光地化をされていない場所なので、人とすれ違うこともない。いにしえの陸奥の空気を感じ、アラハナキ信仰を今に伝える神社に一礼して道路に向かった。
(RICOH GR)
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2018.10.06 Sat l 神奈川県以外 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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