
やがて再び国道16号線に戻り、京急田浦駅への方向に少し進むと、細く薄暗いアーケードがある。
かつて、船越一帯には皆ヶ作という赤線地帯があった。その名残を残すそのアーケードに入ると、あちこちに面影を感じる建物がある。一本の脇道に「飯田屋」という割烹があり、近くには「石川」という表札もあったりする。私には船越生まれの友人がいるが、田浦一帯には「石川」姓が多いのだそうだ。京急田浦駅近くにも、石川を名乗る商店があった。
煉瓦模様の壁の建物は、かつて赤線の名残なのだそうだが、その手の建物がいくつか残っている。もちろん今は普通の民家であったり、普通の商店だったりする。
京急田浦。旧赤線と旧軍港。昭和のノスタルジアに包まれた船越の町は、石川梨華の出身町というミーハーな思い入れだけでは語れない懐の深い町に思えた。午後の陽射しに包まれた町と駅の、静かでのどかな情景が更にそんな思いを彩っていく。